マッサージの免許は正式には「あん摩マッサージ指圧師」という資格です。3つの施術法をくっつけた資格になっていますが、それぞれの違いについて理解されている方は少ないように思います。これらの違いについて説明しましょう。
治療理論の違い
1.刺激の目標
施術を受けた感じは指圧が一番刺激が強く、あんま、マッサージの順にソフトになっていきます。もちろん施術者によっても変わってきますが、技術的にはこれが一般的です。刺激のターゲットがそれぞれ、指圧は(脊髄)神経、あん摩は動脈(もしくは経絡)、マッサージは副交感神経(静脈、皮膚およびリンパ)にあるからです。
2.施術の目的
あん摩は栄養に富んだ血液(動脈血)を全身に行き渡らせること、そして経絡(東洋的な身体観で、気の流れる通り道)の流れを整えることを主目的としています。
マッサージは鬱血(静脈血の滞り)を除き、リンパ(細胞内の体液)に含まれる老廃物を代謝させることを主目的としています。
指圧は脊髄神経の興奮のバランス、自律神経のバランスを整えることを主目的としています。
技法の違い
軽擦法(けいさつほう)
皮膚を押さえながら擦る手技
あん摩では中枢(体幹、心臓もしくは頭)から末梢(手足の先)へ向かって擦ります。
マッサージは逆で、末梢から心臓へ向かって擦ります。
指圧に軽擦法はありません。私の知る限りでは。
強擦法(きょうさつほう)
マッサージのみにあります。膝の裏や肘の周りに行われるもので、渦巻き状に強めに擦りますが、どちらかというと揉捏法に近いです。
揉捏法(じゅうねつほう)
軽擦より強く押さえて筋肉・筋膜や腱を揺すってもみほぐす方法
あん摩では筋肉の伸び縮みの方向と直角に、筋繊維を切るように揺すります。
マッサージでは円を描くように揺すりながら、末梢から中枢へ螺旋に移動していきます。
指圧では行いません。
圧迫法(あっぱくほう)
施術部を押さえる方法で、手のひらや指を使います。
あん摩とマッサージでは指の腹(爪の反対側)全体を使いますが、指圧では指先(爪の近く)のみでピンポイントに押さえます。
叩打法(こうだほう)
たたく方法
指圧では背骨の突起(棘突起)を叩くことがありますが、基本的には行いません。
運動法(うんどうほう)
筋トレみたいな自動運動でなく、関節を伸ばす他動運動(人に動かしてもらう受け身の運動)。
いわゆるストレッチング(ダイナミック、スタティック)として行うのは共通。
指圧では瞬間伸張(スラスト)もある。
牽引法(けんいんほう)
手足や頭部を持って引っ張る方法。運動法の変形ともいえる。
あんまやマッサージでは関節の間を広げる目的で行う。
指圧では神経を引き延ばすことで刺激したりもする。
振戦法(しんせんほう)
揺する、バイブレーション。
多少の違いはあるが共通。
関節を引っ張りながら震わせたり、腹部を押さえながら揺さぶったりする。
その他特殊なもの
あん摩には把握法(はあくほう、つかむ)や曲手(きょくしゅ)とよばれる手技があります。
曲手の主なものには、横手(よこで)、車手(くるまで)、突手(つきで)、挫手(くじきで)などがあります。
文章にするのは難しいので、別の機会に動画でご覧に入れたいと思います。
器具など
マッサージは基本的に肌を露出して直接手で触れて行います。滑りを良くして接触感を和らげるために、タルク(パウダー)やオイルを使うこともあります。施術部位によって露出が難しい部位は、タオルをかけたり、薄い患者着の上から行ったりします。
あん摩は薄い着衣の上から行いますが、滑りを良くする目的で日本手ぬぐい(さらし木綿)をかけて行います。
指圧も薄い着衣の上から行います。基本的に軽擦や揉捏はしないので、タオル等で滑りを良くすることは必要ありません。指先の圧が原則ですが、より強い刺激や、骨の間の狭い場所を狙うときに、指圧器と呼ばれる押圧器具を用いることがあります。