スポーツ障害や腰痛などのリハビリで、腹筋や背筋を運動指導をされることがありますが、思うような成果が出ないことが多いと思います。むしろ悪化することもありますが、なぜなのでしょうか?

腹筋・背筋だけを鍛えると
- 背骨の腰の部分(腰椎)はお腹を凸としたカーブになっている。背筋を強くすれば、腰が反り返って、そのカーブが強くなってしまい、背骨に負担がかかる。
- 背骨の載っている骨盤部分(仙骨)は前方(お腹側)に傾いている。腹筋運動でお腹を前屈する筋肉(腹直筋)を強くすれば、背骨が前方へ引っ張られて骨盤から前方にずり落ちてしまう。(すべり症)
筋肉の引っ張る力だけで背骨を支えるのは、脊柱にものすごく負担がかかります。
ですから腹圧(内臓を包むお腹の空間をゴムボールのように膨らませる力)を使い、背骨を前側から支えることが大切です。
軽度、重度を問わず、腰痛をお持ちの方は、この腹圧のコントロールが出来ていないことが多いです。
腹圧を高めるもの
- 上からは横隔膜
- 下からは、いわゆる骨盤底筋
- 横からは、脇腹の筋肉(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋など) 腹直筋ではなく深部の筋肉です
これらの働きが腹圧をコントロールするのに大切です。
腹圧トレーニングの方法
床に上向きに寝て、両膝を立てて腰を丸めます。
- お尻(肛門)を締める→骨盤底筋を収縮させる
- みぞおち(上腹部)を凹ます→横隔膜を下げる
- 腰の部分の背骨を床に向かって押し下げる→反り腰を修正する
- そのまま胸(肋骨)を広げるように呼吸する 5秒から20秒程度 無理はしないでください
これらの動作を同時に行いますが、腰などに痛みが出る場合は負荷が強すぎるか、姿勢が正しくありません。最初は難しいと思いますので、無理せず少しずつ慣らしていってください。またくり返し練習する必要があります。
なお腰を反らさないことだけは必ず守ってください。腰痛の原因になります。
そのほかバランスボールを使う方法もあります。バランスボールに座って行う以外は同様に行います。
腹圧をトレーニングしても腰痛が治らないとき
すべての症状にいえることですが、運動は体を整えてから行ってさい。
腹圧を高めるトレーニングは、同時に脊髄内圧や血圧を高めることがあります。脊髄内圧とは脊髄を覆う膜(軟膜とクモ膜)の間に流れる脳脊髄液の圧力(密度)のことで、この圧が高まると、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄で圧迫を起こしている部分を刺激して、一時的に痛みが強くなります。また血圧が上がれば、筋肉や靱帯などに傷がある場合、充血して炎症が悪化する可能性があります。
トレーニングを行う前に必要箇所の治療を受けてください。
腹圧トレーニングの効用
- 腰痛全般を予防します。特に腰椎すべり症、脊柱管狭窄症は、腹圧コントロールが出来ないと再発します。
- 内臓下垂を予防します。内臓下垂の原因は他にもありますので、すべての症状を改善できるわけではありませんが、便秘や婦人科疾患、尿漏れ等をお持ちの方は、医師の指導を受けてからチャレンジしてください。
- スタイルが良くなります。お腹、お尻が引き締まるので見た目もスマートになり、姿勢が良くなるので、若々しく見えます。
まとめ
- 腹圧のコントロールが出来るようになってからでないと、腹筋・背筋運動は効果が無い。
- 腹圧トレーニングを行うときは、まず体調を整えてから。